【書評】『女性専用 快感と癒しを「風俗」で買う女たち』レビュー

はじめに

近年女性用風俗ブームが来ている。

女性用アダルトグッズや女性向けAVが市民権を得てきている環境の中で、『女性用風俗店はビジネスとしてイける』と考えた人たちが参入、次々と誕生した。

https://twitter.com/Girls_Enjoy_com/status/1054940018492370944

 

当ブログで執筆した「【2018年最新】東京都内のオススメ女性用風俗店 厳選まとめ」という記事も安定したアクセス数を記録する人気記事となっている。

女性用風俗店比較サイトであるkaikanには本記事執筆時点で100店舗以上が掲載されており、2018年時点で月間ページビュー数が30万PVというから驚きだ。

2019年以降もこの傾向は続くと思われ、女性用風俗経営者、セラピスト、利用者ともに増加することが予測されている。

 

そんな状況の中発売されたのが今回レビューする 『女性専用』だ。

書籍データ

書籍名:女性専用 快感と癒しを「風俗」で買う女たち

著者:ハラ・ショー

出版社:徳間書店

出版日:2018年12月22日

ページ数:288ページ

定価:1,500円(+税)

ざっくり概要

内容は?

風俗向けのルポライターであるハラ・ショー氏がインタビューアとして、様々な女性用風俗店のオーナー、セラピスト、利用者へインタビューしていくという構成になっている。

オーナーへの取材は女性用風俗の経営について鋭く切り込み、利用者への取材では利用者の女性が抱える赤裸々な悩みや利用背景を巧みに引き出す。

実際の施術現場に同行してその場で起きている光景を実況中継として書き起こした章も収録されており、なかなか踏み込んだ内容となっている。

本作を読めば、なぜ女性用風俗にハマってしまう女性がいるのか、なぜ女性用風俗がここまで発展しつつあるのかが理解できるはずだ。

目次

第一章 害のない男を見つけたい

第二章 男性セラピストが見せる奇跡

第三章 女性が求める施術師の基準

第四章 心を満足させる現場へ

第五章 「そうなった場合」に備える女性

第六章 女性専用風俗で成功する条件

第七章 ヘビーユーザーになる女性たち

第八章 実況・カップルコース性感

取材された店舗は?

・ヒーローズ

・東京秘密基地

・DEEP

・萬天堂

・ALUGIS

・ストロベリーボーイズ

6店舗のオーナー、もしくはセラピストに取材が行われている。いずれも業界ではトップレベルの人気店舗だ。この中でヒーローズは比較的昔からある老舗の高級女性用風俗として一部では知られた存在だったが、それ以外の5店舗はいずれも近年オープンした、もしくは近年になって精力的に売り出し始めた店舗だ。

この6店舗に共通するのが、いずれもビジネスとして仕組みを構築しているという点だ。本作では経営者の視点から数多くの裏側が語られている。

著者の経歴は?

ルポライター。『盗撮狂時代』(「原翔」名義。1998年・イースト・プレス)ほか、別名での著書多数。「ハラ・ショー」としては『なぜ「地雷専門店」は成功したのか?』(東邦出版)に次いで二冊目。週刊アサヒ芸能にて「ふ~ぞく探偵 ハラ・ショーが行く」を長期連載中。

アマゾンから引用

どんな人におすすめ?

女性向け風俗について取材された本ではあるが、内容的には男性向けという印象。例えていうなら、「裏モノJAPAN」を少し上品にした感じといったところか。

著者の経歴からも分かるように全体的にアングラ感が漂っていて、そういったDEEPな内容が好きな層にはかなりウケがよさそうな内容だ。

時代の流れ的に本作も、女性用アダルトグッズや女性用AVのように女性目線で書かれた内容かなと思っていたが真逆だった。

女性用風俗を利用してみたい女性よりも、女性用風俗のセラピストになってみたいと思っている男性にぜひ読んでもらいたい。また、普段「裏モノJAPAN」を愛読している紳士淑女にもおすすめしたい。

本編レビュー

害のない男を探したい。

第一章では、実際に女性用風俗を利用する女性へのインタビューから始まる。普通の主婦が女性用風俗を知ったきっかけ、なぜ女性用風俗に通い続けるのか、、、、etc。

他にも、女性用風俗沼にハマりOLから風俗嬢へ転身した女性、人妻デリヘルに勤務する女性、女性用風俗ポータルサイトの女性ライターへのインタビューが収録されている。

著者が風俗ルポライターというのもあり風俗で働く女性が登場しているというのもあるが、実際に私の観測範囲の中でも女性用風俗の利用者はデリヘル嬢やソープ嬢等の風俗関係者の利用が目立つ。彼女たちは仕事で疲れた心を癒すために利用しているケースが多いようだ。

男性セラピストが見せる奇跡

第2章ではヒーローズに所属する神崎氏へのインタビューから始まる。ヒーローズは2012年頃に関西で創業した高級女性用風俗店だ。

現役の男性セラピストへのインタビューということで、ハラ・ショー氏がその実情を詳しく聞き出していく。女性用風俗はどの様な人たちが利用しているのか、どういったサービスを行っているのかといった内容を深く掘り下げていく。後半では、神崎氏が女性用風俗を創業するに至った経緯、他社との差別化など経営者としての一面が語られる。

女性用風俗で5年以上存続している店舗は非常にまれな存在だ。数年前までは女性用風俗経営者というよりは、経営者兼セラピストの個人営業がほとんどだった。ヒーローズは女性用風俗をビジネス化した業界のパイオニアの1社であり、確固たる経営指針をもっていたのが成功した要因の一つのようだ。

女性が求める施術師の基準

第三章では萬天堂のオーナーであるO氏が、セラピストの採用や管理手法について語っている。萬天堂は、2017年から2018年にかけて一気にシェアを拡大し業界トップレベルの人気店にまで成長した。

オーナーのO氏はもともと男性向けの風俗店を経営していたということもあってか、ホームページの作りやSEO対策のノウハウを生かして急速に拡大してきた。

操業して1年半ほどであるにもかかわらず、グループに所属するセラピスト数は100人をゆうに超える。萬天堂は男性セラピストの顔面偏差値が高いことで有名だ。

セラピストの採用基準や女性にうけるセラピストといった内容の他、実際に電話で予約が入る光景、「筆者が独自に集めた女性用風俗にきょうみがあるという女性から届いた質問」へのQ&Aが収録されている。

心を満足させる現場へ

第四章では東京秘密基地のオーナー女性を満足させるための考え方や必要条件について語る。東京秘密基地は萬天堂と同じかそれ以上に、WEBマーケティングに力を入れている。

Youtube、instagram、SEO対策、リスティング広告、MEO対策、、そこらの一般企業に比べてかなり本格的に投資をしている。

もともとは本業として男性向け風俗店を10店舗経営していたというやり手のオーナーだ。東京秘密基地創業当初は自身もセラピストとして現場に入っていたそうだ。そんなオーナーが語る「心をイかせる」というコンセプトとは?

施術で実際に身体をイかせることへのこだわりと、精神的に満足させるということへのこだわりが語られている。

2018年には、所属するセラピストがお店への報告内容を別の顧客に送信してしまい、プチ炎上する”事件”があった。

https://twitter.com/suna_gimo_chan/status/1055019308835880962

その内容には女性をイかせたかどうかを報告する項目もあり、やはり”イかせる”ことへのこだわりが伺える。

章の後半では、所属セラピストはじめ氏の施術現場へ同行取材した内容も収録されている。

「そうなった場合」に備える女性

第5章では独立するセラピストというテーマで、インタビューされるのはプレイングオーナーとして自身も人気セラピストであるALUGISの誠氏だ。

女性用風俗の業界では店舗に所属しているセラピストは業務委託という契約形態で雇われており、給料は完全歩合制なのが一般的だ。セラピストの取り分は40%~50%ほど。2万円のコースだとして1万円ほどがセラピストの手に入ってくるが、税金を考えると実質な手取りは6,7千円ほど。

接客や性感テクニックのノウハウを学んだセラピストの中には独立を目論むものも少なくない。その先駆者とも言えるのが誠氏だ。

インタビューではプレイの内容や、他店との区別化のポイントや方向の独自性等について語られている。

女性用風俗で成功する条件

第六章ではストロベリーボーイズのオーナーK氏に女性用風俗で成功するための哲学をインタビューする。萬天堂や東京秘密基地、DEEP等のようにTHE・風俗店というお店が多い中2018年の3月にオープンしたストロベリーボーイズは真逆の差別化戦略をとっていた。

私が女性用風俗界隈を観測していた中で、ストロベリーボーイズのホームページを初めて見た時の印象は、「なんか作りが雑だな~」といいったものだった。しかし、他店があまり実施していないようなWEBマーケティングも取り入れている。元セラピストでも無さそうだし、風俗業界の関係者でも無さそうだし、一般の人がついにビジネスとして目をつけだしたか、

と思っていたが、、、本作で公開されたオーナーのK氏の素性はほぼほぼ予想通り。風俗とは無縁の企業を経営しているやり手のビジネスマンだった。

ドラッガー経営を実践するK氏が語る女性用風俗での成功法則とは?章の後半では元AV男優で人気セラピストのマサト氏の施術現場へ同行取材した内容も収録されている。

ヘビーユーザーになる女性たち

第7章では再び利用者への女性へのインタビューに戻る。“女性用風俗沼”といった言葉も業界では浸透しているが、実際になぜそこまでハマってしまうのか?

風俗歴10年の主婦、22歳の学生の2人から詳しく聞き出していく。風営法上違法な本番サービスの実態、ハマったきっかけ、風俗に使うためのお金はどう工面しているのか、等赤裸々に淡々と語られている。

実況・カップルコース性感

第8章は、7章からの続きで22歳学生が以前から興味があったというDEEPで実際に施術に同行し、内容を実況中継的にレポートする。

DEEPは、女性用風俗業界では異質の存在だ。キャッチコピーが「想像を超える!究極のおまんこエンターテインメント」というところから分かるように、女性の性に対して真っ向から向き合っている。悪く言うなら、とてつもなく下品なお店だ。

あまりの下品な内容なため好き嫌いがはっきりと分かれるが、興味のある女性は多いようだ。

今回登場するのは人気セラピストの芹沢氏だ。DEEPはセラピストの顔を一切公表していなかったりと謎が多いが、この章では実際にその”DEEP”な施術内容が明らかにされる

脳イキ、ポルチオ、潮吹き、、、様々なテクニックが次々と飛びだす様子はさすがの一言だ。

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最後に

正直この本が出るという宣伝を見たときは、お店のブランディングをしようとしているどこぞの経営者が書いているクソみたいな本でしょ?と思っていましたが、実際にはしっかりと取材されたルポでとても読み応えのある作品でした。

今後も確実に市場が拡大していくであろう女性用風俗の黎明期を取材した本作はアングラ好きには必読です。